貸倒引当金について
売掛金、貸付金などの債権には、将来回収不能となった場合に備えて「貸倒引当金」を見込計上することができます。

 評価の対象となる債権
     ・売掛金、受取手形、先日付小切手、貸付金、割引手形、裏書手形
     ・未収の固定資産譲渡代金、立替金等
     ・地代家賃(個人事業主の場合には、事業所得となるものに限ります)
※以下の債権は、貸倒引当金の対象外です。
      ・保証金、敷金、手付金、前渡金、仮払金
 一括評価の繰入限度額の計算
  この貸倒引当金には以下の2種類あり、これらを加算して算出ます。
      1.一括評価の貸倒引当金:正常債権は一定基準のみ認められます。
      2.個別評価の貸倒引当金:手形交換所取引停止処分などを受けた危険債権で、
          繰入要件に応じて半分又は全額認められます。

           次のうち、個別評価の貸倒引当金の対象債権を除いた金額。
            (対象債権の帳簿価額−実質的に債権とみられない金額)×法定繰入率

         ※法定繰入率とは、業種別に定めた率(卸・小売行の場合は1%)
         ※資本金が1億円を超える法人は→繰入限度額=対象債権の帳簿価額の合計額×貸倒実績率
 個別評価の繰入限度額の計算
次の繰入要件に応じて全額を繰入額に認められます。
  1、会社更生法の規定、民事再生法の規定、和議法の規定、
破産法の規定、商法の規定等の申請開始した
      債権や手形交換所取引停止処分の債権は、実質的に債権の50%が認められます。
  2、上記申請が許可または、債権の弁済が猶予され、又は賦払により弁済される場合は、実質的債権の
       全額が認められます。
  3、その債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、事業に好転の見通しがないばあいは、実質的
      債権の全額が認められます。
貸倒引当金設定の注意
貸倒引当金を設定額は、毎期末の債権残高によって限度額が増減し、その都度設定額を変更します。このため設定した最初の期は、節税につながりますが、毎期の債権額が変動しない企業では、次の期から節税につながらず、逆に設定をやめれば設定額が課税対象額にプラスされてしまいます。

また、上記の通り通常の設定限度額は、債権の約1.5%しかできません。
貸倒引当金勘定科目の特殊性について
貸倒引当金は受取手形、売掛金などの債権を評価する意味をもつ「評価勘定」です。他の引当金のように「負債の部」に表示するのではなく、「資産の部」に表示しますが、中身はマイナスの意味を持っていて、貸倒引当金が増加すれば「資産」の合計が減少します。本来、評価勘定は、資産や負債にも属さない科目で、貸借対照表の貸借金額を照合するために「控除科目」として表記されています。このことは、減価償却累計額も同様です。