会計と税務
税の算出手順を定めた税法基準は会計基準と似かよったところが多く、企業側としても、税務処理を別に行う手数を考えれば、会計基準と同等視するのが当然の流れでした。

そして、これまでは税法も企業会計基準を考慮に入れて定められ、強調関係にあったといえます。

しかし、財政難等の理由で法人税制は、会計基準と強調体制をとることはむずかしいと言われています。

会計基準からすると費用の均等化から必要とされてきた賞与引当金や退職給与引当金も、既に税制改正で廃止され、これらの引当金を計上しても、全額損金参入となってしまいました。

ここでは、会計と税務の関係について解説し、会計処理の対応について説明します。


なぜ、決算で作成した損益計算書の利益に税率を掛けても法人税にならないのでしょうか。
もしもこの方法でよければ、どれほど多くの人が助かるかり、無駄な税法の計算なども省略できて、経済の発展にも貢献することでしょう。また税法が公正な所得算術基準と言うなら、日夜努力して記帳している会計基準は不公正な処理によって利益を算出しているのでしょうか。


会計には企業経営として、ある程度の自由裁量を持たせ、より実情にあった運営を可能にしています。例えば「今期利益が出たから、機械の減価償却を多くしたい。」と将来に残した負の資産を少なくすることは、健全な経営であり、それなりに立派な会計処理です。ただし、税法から見ると「税の公平な徴収」は絶対の原則であり、企業の自由裁量で税金の額が変わることは、許されないのです。

そこで、資産の減価償却に一定の規定を設けて、これを超える場合は、損金から差引く調整を行って、徹底した税の公平を図っています。そしてこの調整処理を「損金負参入」と呼ばれています。


会計決算の利益から税の求め方
会計で言う利益は、損益計算書の通り「収益」から「費用」を差引いたものですが、税務で言う所得は、「益金」から「損金」を差引いたもので、税はこの所得に税率を掛けて算出されます。そして両者の間には、税の公平化を図るための±調整がなされています。
利益 収益 費用
所得 益金 損金
利益から所得を導き出すためには、次のような勘定科目に少々違いがあります。ここでは、税金徴収の公平さを保つためにどのような±調整をしているか、その概要を解説します。
 減価償却の±調整
30万円のパソコンを購入して、費用で落しても会計上、間違いではありません。しかし税法では原則10万円以上の買い物は、その期の費用とするのではなく、償却資産に計上して、耐用年数にしたがって毎期費用で落していくことを規定されています。そして毎期費用で落せる減価償却額は、定められた償却率から算出した額を限度として、超えた金額は損金から控除しなければなりません。その分所得や税額が増えてしまいます。会計では健全経営のために行った処理ですが、公平な税の徴収の観点から、税法では認められないのです。
ただし、規定の額より少なく償却すると、その少ない額は次回に保留してもらえる管理を行っています。
こんなことから、ほとんどの企業の会計処理もこの税制を見据えて、決められた償却率で償却処理を行っています。
 貸倒引当金の調整
売掛金、貸付金などの債権には、将来回収不能となった場合に備えて「貸倒引当金」を見込計上することができます。ただし、会計上は、健全な経営の措置ですが、税法では定められた以上に引当てると超過分を損金負参入となり、結局はその分所得に加算されて税金が増加します。

この引当限度額は毎期期末の債権合計額から定められていて、総債権額の概略1.5%程度しか許されていません。またこの引当金は、毎期変化しその都度面倒な計算が必要なことと、限度額が小さいことなどから、中小規模の法人ではあまり採用されていません。
 賞与引当金の調整
この引当金は、月次決算のばらつきを補正するためや期末時点に来期の賞与を予測して積み立てておく引当金です。ただし、この引当金は、平成10年の税制改正で段階的に廃止され、平成17年以降は全額損金として認められなくなりました。ただ会計上は、現金主義(買掛金や未払計上せずに支払時点で費用とする方法)に該当し、正確な経理とはいえません。このように税制では財政難の理由から会計基準と遊離して、協調体制が難しくなっています。

しかし、月次決算を重要視している企業では、賞与支給月だけが大きく経費が膨らみ、月次比較が出来なくなることから、税法では損金不参入でも、月々の均等化を図るために、年間の賞与支給予測額を12ヶ月で割った分を毎月引当てるべきと考えます。
 退職給与引当金の調整
退職給与引当金も会計の実質主義からすると正しい処理ですが、平成17年以降は、廃止されて、現在では全額損金不参入となっています。このことも会計基準と遊離し始めた一例です。
 公租公課(租税公課)調整
公租公課の中には、下記する税金を損金不参入の税金があり、これらをひらい出して損金不参入にします。
  • 延滞金、加算金、罰金、科料など、ペナルティー的な税金は、損金になりません。
  • 預金の受取利息や株式の配当金等を受取った場合、所得税の源泉徴収をされていますが、この受取時に所得税分を含めて、受取利息や受取配当金として処理し、源泉徴収された税金分を公租公課で処理する人もおられるようですが、この所得税分は法人税の前払いに当り、法人税等と相殺するもので、損金に該当しません。

 受取配当金の調整
会計上配当金は収益に計上しますが、税法上は、原則益金にしなくてもよいとされています。
これは、親会社が子会社を支配する目的で株を保有して、親会社が受取る株式配当は、子会社が稼いだ利益から法人税等を差引いた後の利益を受けたもので、この受取った配当にまで親会社側でも課税することは二重課税となります。もし二重課税をするなら子会社を吸収して、親会社の一部門としたほうが得と言うことになります。

そこで「受取配当金の益金負参入」と言う制度が設けられたのですが、現実には財テクや値上がり益を期待して保有する売買目的とした短期保有株が一般的で、上記した「益金不参入」という理由付けがたたなくなり、売買目的とした短期保有株については、下記するように一定の割合だけを「益金負参入」とされます。

                                益金不参入額 = (受取配当金 − 負債利子) × 50%

※この税制は、短期保有株に対する割引ですが、税の徴収側から見ると二重課税に該当することには変わりありません。
※企業支配を目的(発行株の25%以上を保有)とする長期保有株については、全額を益金不参入となっています。
 交際費の調整
会計上は、会社の営業に不可欠な費用ですが、税法上では「不必要な経費」とみなされ、全額を損金とて認めないのが原則になっています。ただし中小企業に対しては交際費の10%だけを損金不参入とするお目こぼしがあります。(400万円を超えた金額は全額損金不参入) ただし、過度の接待や本来の目的から外れた支出がないように厳しい制限を設けてています。(緩和措置は平成20年3月31日までに開始する事業年度まで)

また平成18年3月の税制改正により、法人の支出する交際費の損金不参入制度について、「1人当り5000円以下の飲食費は、一定条件下で交際費から除外する」とされました。一定条件を下に連記します。

       ・平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用する。
       ・社内飲食費(当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する飲食費)は除く。
       ・飲食した年月日や参加した者の名前とその関係、参加した者の数、飲食店の名称及び住所を記載した
         書類を保存すること。(領収書の裏面記載でOK)
       ・飲食その他これに類する行為のために要する費用であること。例えば得意先の行事に差入れた弁当
         などで、差入れ後相応の時間内に飲食されることを想定されるもので、単に飲食物の詰め合わせを贈答
         する行為は中元や歳暮とみなし交際費の対象となります。
 寄付金の調整
寄付金に関しては、原則損金参入しますが、野放しになると「税金を払うぐらいなら寄付したほうが・・」などと不心得物に対して寄付金限度額を設けて、超えた寄付金を損金不参入となっています。ただし国や地方公共団体に対する寄付は法人税を納付するのと代わりが無いことから、全額損金参入となります。
 源泉徴収された所得税の調整
受取配当金の支払側である法人は、所得税法で株式配当にあたり、支払先が法人、個人を問わず所得税の源泉徴収義務があります。この源泉徴収された所得税は法人税の先払いに当り、確定申告時に法人税と相殺するか、還付を請求することが出来ます。

また、預金の受取利息も同様に20%の源泉徴収されていて、この所得税分も確定申告時に法人税及び住民税と相殺するか、還付を請求することが出来ます。

法人税等の「申告納税方式」について
法人税は申告納税方式と呼ばれ、法人が自分自身で1年間の所得や税額を計算し、税務署に確定申告して納税する方式がとられています。この点、自動車税や固定資産税のように、お上が税額を計算して請求してくる賦課課税方式と大きく違っています。もっとも税務署が全ての法人に対して所得金額を算出して、税額を計算することは不可能なことでしょう。

そこで法人に対し自身で税を算出させるために複式簿記の普及を図る必要があり、もし法人自身が作成できない場合は、税理士や会計士にその作成の権利を与えて両面から普及させたのです。

ところが、他人が税務を代行できるのは税理士等の有資格者に限りられていて、有償無償に係らず有資格者以外の代行を法律で規制されています。最近になってこの法律に対し国内外から撤廃圧力が大きく、規制緩和の要求が高まっているようです。


政府の付託を受けた規制緩和委員会も「税理士の資格があろうと無かろうと依頼する国民が、どちらがよいか選択すればよいことで、ある業務を独占している資格は、無資格者を制度的に排除している。市場と言う共通の土俵で競争することによって、よりよいサービスが、より安く提供されるはずだ。こんな資格制度はサービスや価格の競争を排除している。」という意見が出されているようです。


この論議は別としても創業間もない事業者にとっては税理士さんへの報酬料が大きな負担となっていることは事実です。新会社法も施行され、新しい事業の創造を期待している現在、何とか創業者を助ける方法はないのでしょうか。私なりにこのサイトで次のような提案をしたいと思います。

創業後7年間は下記する条件下で損益計算書の利益金額を所得額とすることを認める。
又、法人税額は、以下の計算式により算出し、簡易確定申告書で提出することを認める。
ただし、課税対象所得が4百万円を超えた場合は、この簡易方式に該当しない。

法人税額=利益額×22%

  1. 減価償却は税法償却率で行うこと
  2. 貸倒引当金及び賞与引当金、退職給与引当金は設定しないこと
  3. 延滞金、加算金、罰金、科料など、ペナルティー的な税金は無いこと
  4. 有価証券の会社所有は無いこと
  5. 1人当り5000円以上の交際費は無いこと
  6. 寄付金は無いこと
  7. 受取利息の源泉所得税は還付請求しないこと

この規定は、あくまでも私の私案です。国税庁関係者がご覧になられたときは、ぜひ一考ください。
国としてもなんら問題のない内容と思います。要するに私が声を大にして言いたいことは、
次の2つです。

             1.創業間もない忙しい創業者に30枚にも及ぶ複雑な確定申告書などを書かせるな。
             2.利益の出ていない創業者に、赤字を証明するだけの確定申告書作成費用

                 数十万円も(税理士さんへの報酬料など)払わせるな


そして、もっと新たな事業を勇気ある者に創造してしてもらいたいと願っています。


Last Updated : 2006.8.15